BL界とか歴史マニアの世界では結構メジャーだと思います、軍服。
私の中では、軍服といえば日本、ドイツ、イギリス。
この三カ国って、様式とか伝統とかを重んじる傾向にあるんですが、軍服という一種マニアックというかアングラな部分が発達したのも、そのせいかなぁ、なんて思います。
あ、断っておきますけど、私別に好戦主義じゃありませんよ。
ただ単に、軍服、っていうカテゴライズされた服が好きなだけです。いうなればコスチュームの好き嫌いみたいなものなので、別に関心はありません。
軍服ってだいたいが様式とデザインの両立でどれも魅力的なんですが、中でも私がついつい目を向けちゃうのはドイツのSS(総統親衛隊)将校軍と、日本の海軍。
日本の海軍はAPHで日本が着てたので、APHファンには有名ですよね。あの白い学ランみたいな軍服です。
で、ドイツのSSですが、…うーん、これはまず親衛隊を知らないといけないんで、ナチスドイツの歴史にある程度明るく無いといけない、という…。
まぁ、アルゲマイネSS将校風軍服で検索すれば色々出てくると思います。
とはいえ私は歴史にそこまでの意見や見解を出すつもりはないんですけどね。
ありていに言えば、軍隊の最高幹部といいますか、エリート、と思えばいいと思います。一種特殊な。
SSの軍服自体は有名だと思います。黒ずくめで、記号化された文様(称号)がちりばめられ、マークの入った赤い腕章。
SSというか、ナチスドイツ自体が一種タブー視されてるんで、おおっぴらに賞賛しにくいんですが、あの『装い』に関しては、本当に素晴らしいと思うんですよ。
威厳とか風格とか、なんというか、手の届かない支配者側、っていう雰囲気。原色の多い大胆なデザインなのだけれど、目に煩くない配置の妙。
実際、SSは三代続いて正統なアーリアの血筋でなければ入れない、という原則もあったそうなので、手の届かない高嶺と思わせる意図はあったと思うんです。だとすれば、あの軍服は確実にその意図を成功させているわけなのだから、絡んでくる諸々の史実は別として、服自体の完成度は高い訳で。
個人的に一番好きなのは、SS・シュトゥルムバーン・フューラー(SS大隊指揮官)の服装です。小道具というか装飾というか、小でもって全体を魅せる、という意味で最も洗練されたデザインかと。
一番の特徴である襟章もシャルムバーン・フューラーが一番綺麗な気がします。バランスが良いというか。
襟章だけなら、SS・オーバー・シャール・フューラー(SS上級小隊指揮官)もバランス良い感じのデザインで良いです。
でも惜しむらくは、「式典でもって美しさが際立つ」という点だよね、やっぱり。
これはほとんどの軍服にいえるのですが、実際に戦地で鉛の雨の中で泥と血に塗れたら映えないだろうな、っていうのがありありと分かるんですよ。
装飾は完全装備で、絨毯の上を肩で空気を切りながら歩き、式典に臨む。そういう場所が一番映える軍服って多いんですよね。
軍服ってのは読んで字の如く、軍のための服な訳ですから、戦地で映えなければ本末転倒じゃないか、と…。
個人的には血みどろの戦いは見たくないのでまぁそれでも良いのですが、「意図」と「その意図の達成」という側面からすると、様式美を重んずる被服デザインとしての完成度はぐっと下がっちゃうんですよね。
で、そういう「意図の達成」としての側面も考えると、一番凄いのはやっぱり日本海軍です。
あの白い軍服は、確かに式典でも映えますが、血みどろに汚れ負傷した場合、泥に塗れて銃を構えた際なんかにものすごく映えるデザインだと思うんです。
実際、日本の歴史を見ると、天狗になって無茶やらかす陸軍と、それの尻拭いをさせられてる海軍、て構図が見えるので、自己犠牲的というか、傷ついて映えるのが日本海軍なのかもしれません。
負傷した姿が映える軍服ってのもこの辺と関係してるのか否か…(まぁ偶然でしょうが)
穢れないというイメージの強い白と、煩くない程度にあしらわれた金銀、要所に置かれて全体を引き締める黒、ストイックに肌を隠す詰襟、絵としての映え方は尋常じゃない。いやマジで。
これも高嶺のイメージとか、当時の大日本帝國が掲げていた正戦というところから来る正義のイメージの表現としては達成度が相当高いです。威厳もあれば清廉としたイメージも残してる。
んでまぁ、これはなんか戦争史実に関わりそうなんで、賛否両論ありそうですが…。
このそれぞれの軍服、絶対の他国の人間が着ても似合わないと思います。
東洋人や黒人にスーツが似合わず、白人に和服や武道服が似合わないのと同じです。どうしても似合わない系統があるし、すっと決まる似合う系統があるんです。
ドイツのSS将校の服も、東洋人も黒人も似合いませんが、おそらく他国の白人でも似合わないでしょう。
第三帝国・ナチス・ドイツだった頃のドイツ人がもっとも似合うに違い無い。多分、現在のドイツ人でも当時の人ほどは似合わないんじゃないでしょうか。
日本海軍の服だって、白人や黒人が着れば馬子に衣装も良いところ。中国や韓国などの比較的近い人種でも似合わないでしょう。
現在の日本人も、大日本帝國だった頃の日本人ほどは似合わないと思います。
これは仕方ないんですよね。
だって服というのは着る人間を基準に作るものなんですから、モデルとなる国民が一番似合うのは当然のこと。他国の人間が似合わないのは当然なんですよ。
加えて、軍服というのは軍という特殊な組織とフィールドのための装いであって、軍というのはそれぞれの集団ごとに特色をもつものです。これは軍に限らず、特殊な組織にはつきもの。
極端な言い方をすると、軍というのは一つの括りであり、それ以外である部外者が似合う訳が無いんです。
SSなんか良い例ですよね。
当時のドイツはナチスだとかファシズムという言葉で分かるとおりすごく特殊な国と言うか集団でしたし、SSなんかは更に特殊で狭い括りだった訳で。
戦時中は命の危機による性的興奮で男性同士の恋愛や性交渉が多かった、っていうのは結構有名な話ですが、中でも当時のドイツは、合意の上であれば、とおおっぴらに認識していたんです。
が、その中でもSSだけは例外で、男同士の恋愛や性交渉は「罪」で、罪として裁かれる際、何らかの理由をつけて、必ず「死刑」にされたそうです。
更に、上記した通り、三代続けて純粋なアーリアの血であるとの証明も必要で、ついでに言うなら最高指揮官である総統=マスター=神、という図式もあった訳で。
倒錯的というか、あまりにも特殊な背景こそ、服を着る人間の表情やまとう雰囲気を作り出していたと思うし、あの軍服のストイックさや狂気や純潔さを引き立てていると思うんです。
そういう意味で、軍に所属していない、他国に住んでいる、という部外者に、軍服が似合うわけが無いんですよ。
ごく一部の人間が袖を通すことで生まれる、狂気やストイックさや純潔さや威厳や、そういったものが私にはすごく美しく思えるんです。
倒錯的なものに美を見出すのは人間の共通意識ですからね。
とはいえ、戦争史実なんかは痛ましい限りですし、戦争なんていらんわ、軍服なんぞ文化的に博物館なんかに残すだけで良いよ、軍隊なんか世界から消えてしまえ、とも思ってるんで、軍服好きといてはすこし異例かもしれませんけれどね。